柄は柄で柄じゃない。印花
ー自然の造形は美しいー とよく耳にするけれど、そんな仰々しいことなく、「え!?なにこれ、この感じ面白そう!」という“思い付き”にも近い感覚で自然の形を取り込んでいる印花シリーズ。
柄の秩序がありそうで…ない。凸凹の浅い深いで出てくる濃淡が絶妙で、なんだかよくわからないけど、一目見て、この器に惚れてしまった。この感性はいったいどこからやってくるのか…普段なかなか入れない、奥の現場にお邪魔して、作っているところを見せてもらった。「最初はその辺に置いてあった花崗岩の花瓶で柄を付けててね。花瓶をそのまま土に押すのが大変になって、その形をかたどって、道具(ハンコ)を手造りしたんだよ」と、使いやすくしたその道具を見せてくれた。
ほー!と感心する間もなく、型に入ったままの器の生地を回しながら、リズミカルに刻印していく。一通り刻印し終わり、はい、出来上がり!と思った次の瞬間、「うーん、緊張してるんかな?ちょっときれいに打ちすぎちゃった。この柄って柄なんだけど柄じゃないってゆうか・・」と、もう一度土を均して柄を埋めてしまった。
再度やり直した柄は、少しだけランダムになっていて、確かになんとなくいい感じ。その“少しだけ”の感覚が、日々作り続け、手や体が覚えている感覚と合致して、その人にしか作れないモノづくりになっているように感じた。
柄だけど柄じゃない、意図しているようでしていない、自然なこと。そうなると、きっと本能で惹かれてしまう。惚れてしまうのも仕方ない!ということに…
これを押したら面白い柄ができるのでは?と先代がたたらの器に押していたのがこの花器。確かにこれだと大きくて、たくさん押すのは大変そう。けれど、道具にした後も、この花器がちゃんとルーツとして残っていて、このエピソードがまた後世に面白く伝えられるのかな、と思うとこの先もまた楽しみ。